今日はバランスについて。
少し前の話ですが、前から行きたかった某料理屋にようやく行くことができました。
うわさどおりに、見たこともない感激、感動の盛り付けに、度肝を抜かれました。
刺身に盛り付けられている花や葉っぱは、みんなオーナーの庭からのもの。
まるで生け花の中に、お刺身が鎮座しているかんじです。
お皿は5人が5人とも全く違うお皿で、しかも盛り込みでも出来そうなくらいの大皿です。
盛り付けもさることながら、お皿自体も素晴らしいものです。
直接窯元まで出向いて選ぶというのですから!
こんなふうに器を使いこなせたら、素適だろうなーとため息がでます。
センスがものをいうんだろうけれど、
これは和田冨美さん曰く、’鍛えられる’ものだから、
やっぱりいろいろなものを見て、出かけて、食べて、触って、
自分を’磨く’ことが必要なんだな。
ウインドーショッピングも無駄ではないということです。
それにしてもこのオーナーのセンスだから出来る、この演出。
絶対にマネをしようと思ってもそれは無理・・・・。
ピカソの絵が描けないのと同じかも。感性が明らかに違います。
そういう意味では天才肌なのかもしれません。
ここの建物はオーナーの自宅。それを改装して、お店にしてあります。
だから、店自体がオーナーのすべてを語っています。
お料理と器と盛り付けだけではありません。
壁や天井の色、家具の配置、障子のデザイン、
テレビを隠すための家具、のれん、トイレ、照明、設え、などなどのすべてのものです。
はたして、宿屋はどうでしょう?
お料理からは話題が離れますが、このたびは盛り付けの勉強とともに
宿屋業について、認識を新たにすることができました。
私達の仕事もまた、自分自身を表現する仕事だということです。
でもそれはあるじや私や、働く社員たちの価値観を押し付けるものではありません。
宝巌堂が選んだすべてのものに囲まれた時、
宝巌堂に一歩足を踏み入れた時、
そのときにお客さまにどれだけ心地よいと感じていただけるかが、肝心なのです。
とてもドキドキします。
温泉の質だけが、お料理だけが、しつらえだけがよければいい、というものだけでは
決してないのでしょう。
’1泊していただくということ’は、なによりも’居心地がすべて’といっても過言ではないのかも。
この自己主張と、自己表現のバランスは、
どの仕事においても難しいものですね。