二つのレシピ

お料理はどこで習ったのですか?

けっこう聞かれることが多いです。

恥ずかしくて大きな声では言えませんが、

結婚するまで料理はしたことがありませんでした。

カレーライスも肉じゃがもハンバーグも

自分で作ったことはありませんでした。

実はね、大学時代、先輩の宿にバイトに行ったときは

洗濯機の使い方も知らなかったんです。。。。

今思うと顔から火が出るわ。

林檎屋母は、忙しい中でも手作りの人で、

果物屋の店番の合間を縫って、夕食の準備をしていました。

でも、母に料理を習ったことはない。

台所も狭いし、時間も限られている。

母にとってはちゃちゃちゃっと作るのが何より優先です。

子供と一緒に作ったり、教えたりなんてぇことは

面倒の極みだったことでしょう。

これ幸いと私も手伝いもせず、

上げ膳据え膳の、お嬢さまをしていたのでした。

いや、ホントに、やっぱり恥ずかしいわ。

結婚して、あるじと二人暮らしの時は

料理本と首っ引きです。

まさか、こんな私が

今お客さまのお料理を出しているなんてね、

本当に人生は予想外のことだらけ。

何も教わってきませんでしたが、

唯一、手作りのものを食べてきた、

これは本当に感謝しています。

餃子も春巻きもコロッケも、

時代もありますが、買ってきたものは

一切食卓に並んだことはなかったかも。

だから、今私が作るこれらのご馳走は、

きっと母が作った、あのころの味なんだよなぁと

ふと思います。

レシピでない。

自分の舌が私のレシピ。

私にはもうひとつ。

大事なレシピがあります。

それはばあばの味。

ばあばからはたくさんのことを伝授されていました。

されていた、と敢えて表現するのは、

そのころは、まったくそう感じなかったからです。

でも今、自分が中心になって

山菜を処理したり、煮物を作ったり、

混ぜご飯を作ったり、漬物を仕込んだり

もろもろの作業をしていると、

思い出すんです。

ばあばは確か、こう言っていた、

ばあばはそう言えば、こうしていた、

ってね。

私にとって、大事な二つのレシピ。

舌と行動で、

伝えていく使命があるなぁと

今感じています。

そういうレシピ集、出せたらいいなぁ。

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