あるじの仕事は、
何事においても、すごくすごく丁寧。だからゆっくり。
私は何事においても、すごくすごくおおざっぱ。だから超特急。
そして、
宿屋のおやじは人前に出るのがかなり苦手なタイプ。
今でこそ、お客さまにばったり出会ってしまっても動揺しませんが(ちょっと大げさ)、
もっと若いころは、ホントに嫌がってました。
だから、お客さまに応対するのはほとんど私の仕事。
あるじは、といえば、台所で仕込みをしたり、
大工仕事をしたり、
冬には、屋根の上で雪掘りをしたりと、
思いつくことは、一人で黙々とできることばかり。
たまに、あるじとばったりと出会ったお客さまには、
‘あるじさん?
あらまぁ、あるじさんに会っちゃった!’
なんて、感激されてましたね。
そんな人前に出る仕事は苦手なあるじが、
毎朝必ずする仕事は、実は
玄関の掃除なんです。
それが終わると、宝巌堂の坂の掃除。
毎回坂を全部するわけではありませんが、
風が強くて杉っ葉がとっ散らかったような朝は
必ずします。
この日は隠し撮り!
風が強くて、杉っ葉や、種がたくさん落ちていた。
玄関を掃除するということは、
人に会う確率も多いはず。
声をかけられる機会も多いはず。
それでも毎朝必ずしています。
それから、自在館さんに新聞を取りに行きます。
(栃尾又には新聞配達は来ないので、
毎朝路線バスで新聞が運ばれてきます)
ついつい忘れがちになる玄関の掃除。
でもよく考えてみれば、
お客さまとの最初の接点はここなのです。
林檎屋の隣は飯田屋という、どぜう屋さんですが、
‘オヤジの仕事はタレの管理と下足番’
が、先代からの教えだそう。
宝巌堂の場合は、
‘オヤジの仕事は玉子焼きと玄関掃除’
地味な仕事だけれど、
これがすべての仕事の基本なんだろうな。
お客さまと楽しく大笑いする私と
黙々と掃除に励むあるじ。
うーん、対象的だ!
どうぞこれからもよろしくお願いします。