嫁に来たばかりの宝巌堂には、
客室に冷蔵庫はありませんでした。
もちろん、洗面所もトイレもありませんでした。
だって、客室のドアはふすまで、
鍵もなかったんだからね！
なんていい時代、平和で、安全な時代だったんでしょうね。
新しくして、当然のように、
部屋にあったらいいなぁとずっと考えていたものは
だいたい設えました。
洗面所、トイレ、冷蔵庫、鏡、部屋の鍵！
欲を言えば、洗面を２つ備えたかった。
お茶碗洗う様と、顔洗う様に。
それは叶わなかったので、
３階に水事場（炊事場ではなく）を残しました。
お水を汲んだり、お茶碗洗ったり、ちょっとお洗濯したり。
湯治場の風景を少し残しました。
そして数ある中でも
冷蔵庫は必須だったもののひとつでした。
憧れ、ってかんじ。
キンキンに冷えたビールが好きな私には
それがあまり望めない冷蔵庫でしたが、
どーんと鎮座した姿を見て、
これでようやくいっちょまえの客室になったなーと
ちょっと嬉しかったんだなー。
そして、９年たち、
３．１１の震災。
電力不足、節電の嵐、原発問題。
冷蔵庫の存在にだんだんハテナマークがついてきた。
なぜかというと、
今まで、使用頻度が本当に少なかったから。
本当に必要なんだろうか？
実は冷蔵庫はありました、昔も。
廊下に一台。
そう、共同冷蔵庫です。
お客さまは自分の持ってきた薬や漬物や
果物やお菓子やら、
名前を書いてそこに入れていたんです。
病院の冷蔵庫みたいでしょう。
でもなんだかいいじゃない。
これでいいんじゃない。
このたび、
それを再びやってみることにしました。
震災以来、もう２年も考えていたことです。
昨日あるじに問われました。
‘冷蔵庫は本当に止めるんだよね？’
‘そうだよ！’と大きく返事して、
さて、今朝の話。
‘今日、粗大ごみの回収頼んだから。
冷蔵庫捨てるよ’
‘ええええ！？？
そ、そんな突然。。。’
ってか全然突然じゃないよね。
今まで冷蔵庫のあった場所。
すっからかんになりました。
荷物置き場にちょうどいいかしら。
そして、まだ買っていないけど、
３階の水事場に
共同でお使いいただける蔵庫を置く予定です。
時代に逆行しているかもしれません。
便利な世の中にあって、
ちょっと不便かもしれません。
そんな日常も、また楽しんでいただければ、
と、願っています。
新しい冷蔵庫を早く買わなくちゃ！
